最近、「退職代行」を利用して突然会社を去るケースが増えています。
ある日、代行業者から退職の通知が届き、初めて事態を知る──そんな事例も珍しくありません。
事前に兆候が見られず、本人からの相談もないまま、突然の退職に至る背景には、「辞める」という選択肢のハードルが下がっている現状があります。
今回ご紹介するのは、そんな退職を考えた相談者とのやりとりです。
「もう限界です。退職代行に頼んで辞めようと思っています」
ある日、エィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口に1本の電話が入りました。
電話の主は、準大手企業に勤める20代後半の男性社員。
彼は冒頭から「辞めます」とはっきり言い切りました。
その語調には怒りよりも、深い疲れと諦めがにじんでいました。
この男性は、入社5年目。最近ではプロジェクトのリーダーも任されるようになっていましたが、上司との関係が急速に悪化していたといいます。
「意見を出すたびに『君は何もわかってない』『だからダメなんだ』と人前で叱責されて……周囲の視線も冷たくなっていきました」
いつしか、彼は孤立感に苛まれ、仕事への意欲も失っていったといいます。
さらに、週末でも上司から業務連絡が届き、修正作業を指示される日々。
オンオフの区別がつかず、睡眠にも影響が出ていました。
「もう、スマホが鳴るたびにビクッとします。土日も落ち着かなくて。正直、心も体もボロボロでした」
そんなある日、「このままじゃ壊れる」と直感した彼は、震える指で「退職代行」と検索。
すぐに依頼を進めようとしましたが、ふと社内ポータルに掲載されていた“社外相談窓口”の案内が目に入りました。
「どうせ何も変わらない。でも、せめて最後に言いたいことだけは言って辞めたいと思って……それで、ここにかけてみたんです」
そう話した彼の表情は見えませんでしたが、その声には、「ただ黙って辞めたくない」という一縷の思いが込められていました。
しかし、彼が退職代行という手段を選ぼうとした背景には、単なる感情の爆発ではなく、
「どうせ上司には話せない」「誰にも届かない」といった深い絶望と無力感があったのです。
社外相談窓口のカウンセラーは、すぐにこの案件の深刻さを察知し、労務コンサルタントへの引き継ぎを決定します。
相談者の切実な声をどう受け止め、どう橋渡ししていくか──この時点で、事態はすでに
“前触れのない突然の退職”の一歩手前にありました。
「辞めたい」と訴える社員に、コンサルタントが提案した“ある選択肢”──。
それは「もう終わりにしたい」と語った彼の心に、わずかな変化を生み始めていきます。
次回、中編では、会社と社員をつなぐ“対話”のはじまりをお届けします。
エィチ・シーサービス株式会社では
従業員と企業の間に立ち、トラブルの未然防止と関係性の再構築を支援する「社外相談窓口サービス」を提供しています。
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