愛社精神が生む“善意の圧力”──見えないパワハラの構造【中編】

■前回のあらすじ

B社の人事担当Cさんは、ベテラン社員の厳しい指導が「熱心な教育」か「パワハラ」か判断できず悩み、エィチ・シーサービスに相談しました。

コンサルタントからは「判断基準は社内の常識ではなく世間の基準で考えるべき」と助言され、普段の関係性づくりの重要性も指摘されました。

では、なぜB社のように愛社精神の強い職場ほど、指導がエスカレートしてしまうのでしょうか。



 

愛社精神がハラスメントを誘発する理由

企業文化の中で愛社精神は大きな推進力となります。

しかし、以下のような構造的理由から、逆にハラスメントを誘発しやすい側面を持ちます。

  1. 価値観の同質化による排他性
    長年同じ環境で働くことで価値観が均質化し、「会社の常識」が「絶対的な正しさ」になりやすくなります。結果として新しい考え方を持つ人に圧力がかかります。
  2. 善意の押し付けの正当化
    「部下のため」「会社を守るため」という名目が、厳しすぎる指導を正当化します。悪意がない分、本人は問題意識を持ちにくいのです。
  3. 成果=忠誠心という評価構造
    結果が出ない社員を「努力不足」「会社愛が足りない」とみなし、過剰に追い込む傾向が生まれます。
  4. 異論の抑制
    「和を乱すな」という空気が強く、意見が言いにくくなります。その結果、問題の早期発見が阻まれてしまいます。

こうして愛社精神が強い職場ほど、厳しい指導が正しいこととして拡大しやすいのです。

 


 

善意が追い詰める現実

Cさんは、コンサルタントの説明を聞きながら、これまでの若手からの声を思い返していました。

ベテラン社員の指導に叱責や侮辱の意図はなく、むしろ「育てたい」という思いが根底にある――それを誰よりも理解していたからこそ、Cさんは長らく「厳しさの裏返し」と捉えてきました。

けれど、若手が次々と萎縮し、声を上げにくくなっている現状は、まさにその善意の指導が知らず知らずのうちに追い詰める構図だと気づかされたのです。

さらにコンサルタントからはこうした指摘もありました。

「会社として“威圧的な指導”を容認し続ければ、変化は生まれません。

問題を認識しなければ、いずれ法的な制裁に発展する可能性も否定できないのです。」

Cさんは、これまで「伝統」と思っていたものが、組織の弱点になり得ることを痛感しました。


 

「善意の指導」が若手を追い詰めてしまう。それどころか、訴訟リスクにまで発展するかもしれない。──その実態に気づいたCさん

では、こうした問題を未然に防ぐには何ができるのか。

次回は、日常の関係づくりと組織的な仕組みによる具体的な対策をお伝えします。

 


 

エィチ・シーサービス株式会社では、

  • 善意のつもりで行った指導が、実は相手を追い詰めてしまうこともあります。

    私たちはその盲点を指摘し、組織がより良く変わる支援をしています。

    社外相談窓口を活用することで、見えない圧力や問題の兆候を早期に把握し、働きやすい職場環境づくりをサポートします。

    ぜひ、エィチ・シーサービス株式会社にご相談ください

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