信頼を育む指導へ──日常と仕組みでつくる“境界線のない職場”【後編】

■前回のあらすじ

B社では、愛社精神が強いがゆえに「善意の押し付け」や「異論の抑制」が生まれ、厳しい指導が正当化されやすい構造がありました。

Cさんは、ベテラン社員が悪意なく若手を追い詰めてしまうリスクに気づきました。

では、そうした環境を変えるためには、日常の関係性づくりや制度面での取り組みが不可欠です。



 

コンサルタントは少し間を置いてから、Cさんに語りかけました。

「現場でのハラスメントを防ぐには、いざというときの対応だけでなく、日常の関係性づくりが大切です。

指導の瞬間だけを切り取っても本質は見えません。

普段の小さなやり取りこそが、厳しい言葉を“信頼のある指導”に変えるか、“一方的な叱責”にしてしまうかの分かれ道になるのです。」


 

日常の関係性づくり

ハラスメントを起こりにくくするには、指導の場面だけでなく普段のやり取りが重要です。

  • 感情のクッションをつくる
    「昨日の資料ありがとう」など小さな労いを積み重ね、信頼残高を蓄えておく。
  • 相手の背景を知る
    経験や価値観を理解し、それに合わせた指導を心がける。
  • 心理的距離を保つ
    「親しいから厳しくしても大丈夫」という思い込みは危険。役割の境界を意識する。
  • 感謝と評価を伝える
    注意だけでなく、努力や成果を認める言葉を意識的にかける。

こうした日常的な配慮があると、厳しい指導も前向きに受け止められやすくなります。


 

B社としても、いくら愛社精神ゆえの善意の指導であっても、威圧的な言動やパワハラにあたる行為は容認しないという立場を明確にしていく必要がありました。

「伝統だから」「悪意がないから」という理由で見過ごせば、やがて企業全体の信頼を損ない、訴訟リスクにも直結します。

だからこそ、会社が公式に「適切な指導」と「ハラスメント」の線引きを示し、改善に取り組む姿勢を打ち出すことが重要なのです。


 

組織的な予防策

さらに、企業としては以下の3つのステップが有効です。

  1. 事例ベースの研修
    抽象論ではなく、自社に即したケースで「指導」と「ハラスメント」を比較して学ぶ。
  2. 管理職・ベテラン層の教育
    目的と方法を区別し、表現や伝え方を工夫する力を養う。
  3. 相談しやすい環境の整備
    社外相談窓口の存在を周知し、「相談は改善の第一歩」という文化を広める。

 

最後にCさんへ伝えられた言葉はこうでした。

「指導する側は、自分の価値観を押し付けるのではなく、相手に合わせて“どう伝えるか”を考えてください。

普段から信頼を築いていれば、厳しい指導も前向きに受け止められます」

電話を切った後、Cさんは胸の中でこれまでの出来事を反芻しました。

「厳しい指導を悪いと決めつけるのではなく、その背景や受け止め方にこそ目を向けなければいけないんだな…。

愛社精神を誇りに思う気持ちは大切だけれど、それを守るには“人を大切にする姿勢”が欠かせない。」

そう実感したCさんは、ハラスメントの起こりにくい現場を作り出そうと心に決めていました。

愛社精神は組織の誇りですが、行き過ぎれば人を傷つけ、組織の力を弱めます。

だからこそ、常に自分たちの在り方を問い直す姿勢と客観的な視点が欠かせないのです。


エィチ・シーサービスでは

エィチ・シーサービス株式会社では、日常の関係性づくりや指導の工夫といった、組織が抱える目に見えにくい課題の改善も支援しています。

社外相談窓口や研修を活用すれば、社員同士の信頼を守りつつ、適切な指導やハラスメント防止の仕組みづくりにつなげることができます。

愛社精神を生かしながら、社員が安心して成長できる職場づくりにぜひご活用ください。

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