職場において、一部の社員の行動や態度が周囲の業務や人間関係に影響を与えることは珍しくありません。
特に「体臭」「遅刻」「居眠り」などの問題は、周囲からは単なるマナー違反ややる気の欠如と見られがちですが、
本人にとっては複雑な背景が潜んでいることも多く、安易な指摘や叱責では解決しません。
それでも現場で日々接している同僚や管理者にとっては、我慢の限界を超えることもあります。
そんなとき、総務や人事の担当者は「個人の尊厳」と「職場の秩序」という二つの価値の間で難しい判断を迫られるのです。
今回ご紹介する事例は、ある製造部門を持つ準大手企業で実際に起こった出来事です。
現場のSOSを受けた総務担当者が、自分たちでできる限りの対応を行った末に、社外相談窓口である私たちに助言を求めてこられました。
■現場からのSOS
ある日、エィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口に、製造現場の総務担当者から一本の電話が入りました。
相談内容は、製造現場から繰り返し寄せられている「ある社員」に関する困りごとです。
「〇〇さんの体臭がきつくて、近くで仕事をするのがつらい」
「一緒に作業するのが正直しんどい」
これは単なる軽口や陰口ではなく、複数の社員が真剣に訴えてきたもので、人事としても無視できない状況でした。
しかも、その社員には別の問題もありました。始業時間を守れない、作業中に居眠りを繰り返す、注意しても表情が変わらず改善が見られない――。
現場の管理者も「何度も注意しているのに変わらない」と困り果て、エィチ・シーサービスへ相談することにした、とのことでした。
■現場の総務担当者の葛藤
総務担当者はこれまでにも面談を行い、勤務態度については繰り返し口頭で注意し、本人に改善のきっかけを与えようと努力してきました。
しかし状況は一向に変わらず、むしろ現場の不満は募る一方。
「次はどう切り出せばいいのか分からない」
「これ以上は本人を傷つけてしまうのでは」
そんな迷いが胸に重くのしかかっていました。
さらに悩ましいのは、この問題がチーム全体の空気を悪くしていることです。
「また今日も遅れてきた」「一緒の作業は避けたい」――そんな小さなつぶやきが日々積み重なり、職場の士気を確実に下げているのが分かります。
加えて、一部の現場メンバーからは「もうあの人は異動か退職にしてほしい」という声すら出始めていました。
しかし、工場総務の担当者は、まだ現場の問題として扱い、本社の人事担当へは報告していませんでした。
「どうにもならないなら人事に任せるしかない」と考えてはいるものの、人事側も簡単に処分や配置転換を決められるわけではありません。
本人の権利や法的手続き、健康面への配慮、そして企業としての責任を踏まえると、軽率な判断は許されないのです。
「私たちのやり方が悪いのか、それとも何か別の原因があるのか…」
「法律的な問題にならず、現場も納得できる方法はないものか」
“自分たちでできることは一通り試した”という感覚の中で、残された選択肢は、第三者の視点からの助言を受けること。
そう考えて、社外相談窓口である私たちに連絡をくださったのです。
次回は、相談内容を本社担当へ報告した際に生じたやり取りや、企業内での対応の難しさにも触れ、現場と本社の橋渡し役としての具体的な対応の進め方を解説します。
コンサルタントが示した「安易な決めつけを避ける理由」をご紹介します。
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