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「どうして自分ばかり責められている気がするんだろう……」
エィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口に、そんな呟きとともに一本の電話が入りました。
相談者は、メーカー勤務の30代前半の男性社員。
落ち着いた声の奥に、長い葛藤を押し殺してきた気配がありました。
当初は「上司とのコミュニケーションの悩み」として話し始めた彼。
けれど、話が進むにつれ、次第に言葉が途切れがちになります。
「意見を言うたびに“根拠を示して”と言われて、最後は何も言えなくなるんです」
「否定されているわけじゃないのに、どんどん自信がなくなっていって……」
それは、上司との間に少しずつ進行していた“ロジカル・ハラスメント”でした。
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彼の上司は、社内で数少ない女性管理職のひとり。
生真面目で、仕事への責任感が強く、上層部からの信頼も厚い人物でした。
誰もが「頼れる女性リーダー」として一目置く存在。
だからこそ、部下が感じていた“プレッシャー”は誰にも理解されにくいものでした。
彼女の指導は常に論理的で、筋が通っていました。
しかしその厳密さが、ときに「人を追い詰める言葉」に変わっていったのです。
「それって、データ的に正しいの?」「論理が飛んでるよ」「そんな感覚的な話は通用しない」
会議のたびに浴びせられる正論のシャワー。
ミスを指摘する際も感情を抑えた淡々とした口調で、反論の余地を与えない。
表面的には“厳しくも公正な指導”。
しかし、受ける側には「まるで人格まで否定されたような苦しさ」が積み重なっていきました。
“男なのに弱音を吐くなんて情けない”“相談するなんて大げさだ”
そうした無意識の思い込み、いわゆるアンコンシャス・バイアスが、
彼自身を長いあいだ沈黙へと追い込んでいたのです。
たとえ不安や違和感を覚えても、「自分が我慢すれば」と押し込めてしまう。
結果として、誰にも気づかれないまま心がすり減っていく。
「正しいことを言われているはずなのに、なぜこんなに苦しいのか」
その問いこそが、ロジハラの本質を浮かび上がらせます。
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カウンセラーは焦らず、まず相談者の話に耳を傾けました。
「“男だから我慢しなければ”ということはありません。
立場や性別にかかわらず、仕事の範囲を超え、心や行動に影響を与えるような行為は、
組織として適切に扱うことが求められます。ここでは匿名性と守秘義務が守られます。
安心できる方法を一緒に考えていきましょう。」
その言葉に、彼の声がわずかにやわらぎます。
自分が感じていたのは“甘え”ではなく、上司との関係性の中で積み重なった“構造的な問題”だったのだと、彼は少しずつ理解し始めました。
次回は、女性上司の行動にも影響していた“無意識の期待”に注目し、
どのように組織が公正に事実を受け止め、適切な対応を検討していったのかをお伝えします。
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エィチ・シーサービスでは
“指導とハラスメントの境界”に悩む事案にも丁寧に対応しています。
「正しさ」「成果主義」「公平性」といった価値観が強い組織ほど、
その裏に“人の気持ちを置き去りにするリスク”が潜みます。
私たちは、外部の中立的な立場から、性別や立場を問わず、
社員と企業の双方にとって健全な対話の場をつくるお手伝いをしてい
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