“正しさ”の陰に潜む見落とし──ロジハラが生まれた背景【中編】

■前回のあらすじ

女性上司の「論理的で厳密な指導」に追い詰められ、心身の不調を抱え始めた男性社員。

誰もが「しっかり者」と信じて疑わなかった上司の下で、静かにロジハラが進行していました。

 



 

社外相談窓口のカウンセラーは相談内容を整理し、コンサルタントへ引継ぎ、

本人の了承を得たうえで、社内の人事部門へと慎重に案件を引き渡しました。

当初、社内担当者の反応は「まさか」というものでした。

女性上司は実績も評価も高く、管理職としての教育にも積極的に取り組んできた人物。

「彼女がそんな言い方をするとは思えない」「彼の捉え方が繊細すぎるのでは」

そんな声も一部で上がりました。

ですが、エィチ・シーサービスから共有された記録や会話の文脈を見た人事担当者は、

次第に問題の構造を理解し始めます。

それは「人格攻撃」や「怒鳴りつけ」といった露骨なハラスメントではなく、

正論を盾に相手を追い詰めるタイプのロジハラ。

正しいことを言っているがゆえに、誰も指摘できず、部下の心だけが静かに摩耗していく、そんなケースでした。

 


 

女性上司は面談の場でこう語りました。

「私は公平に評価したいだけなんです。感情的にはなっていません」

「公平に、というお言葉がありました。それは、自分の基準を他者にも求めていませんか?」

沈黙ののち、彼女の表情にわずかな戸惑いが浮かびました。

彼女は、男性中心の環境で「女性は感情的だ」と見られないように、

論理で認めさせるしかないと努めてきた管理職でした。

その強さが、無意識のうちに「正論を貫くことが正義」という信念に変わり、

部下の意見や感情を「弱さ」として見てしまっていたのです。

 


 

人事部は話し合いを重ねる中で、

今回の問題を「性別による加害・被害の構図」としてではなく、

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)によって生じた行動の歪みが根本原因であり、

その影響は個人だけでなく、組織全体にも及んでいると整理しました。

・女性管理職だからこそ甘く見られないよう厳しくしなければならない

・男性部下だから多少の指摘は耐えられるはずだ

・正論であれば配慮や気遣いは後回しでよい

これらの無意識の前提が、関係性のバランスを崩し、ロジハラという形で表面化していたのです。

 


 

この出来事をきっかけに、会社は「性別」ではなく「管理職としての配慮」という観点から、

組織全体のコミュニケーションを見直すことになります。

後編では、ロジハラ問題を通じて浮かび上がったアンコンシャス・バイアスへの気づきと、

それを組織の成長につなげた企業の取り組みをお伝えします。

 


 

エィチ・シーサービス株式会社では、

  • 指導の意図が誤って伝わるリスクや、

    無意識の思い込みが組織の風土に影響するケースに対し、

    第三者として冷静かつ丁寧な整理を行っています。

    社員一人ひとりが安心して意見を交わせる職場をつくるために、

    “見えにくい摩擦を見える化する──それが、私たちの役割です。

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