■前回のあらすじ
物流会社で働く20代の女性社員は、年上の男性同僚社員からの「〇〇ちゃん」という呼び方に深く悩み、エィチ・シーサービスの社外相談窓口に電話をかけました。
「仕事に行くのが怖い」と震える声で訴える相談者。
しかし、話を聞く中で、彼女の恐怖心の原因が、単なる呼称の問題だけではないことが明らかになっていきます。
- 「〇〇ちゃん」と呼ばないで――日常の“困惑”が積み重なった職場の実態【前編】
- 「ちゃん付け」は入り口に過ぎなかった――小さな呼び方が示す職場のひずみ【中編】
- 「ちゃん付け」を見直す――小さな呼び方が与える影響【後編】
カウンセラーが丁寧に状況の聞き取りを行うと、彼女は少し言い淀みながらも、男性社員の日常的な言動について語り始めました。
「実は……『〇〇ちゃん』って呼ばれる時、いつも距離が近いんです」
男性社員は、業務上の必要がないにもかかわらず、彼女のデスクに過度に接近し、パソコンの画面を覗き込むようにして話しかけてくることが多々ありました。
さらに、会話の内容も業務とは無関係なものばかりでした。
- ・「今日の服、なんか雰囲気違うね。かわいいよ」
- ・「〇〇ちゃんはスタイルがいいから、何でも似合うね」
- ・「休みの日は何してたの? 彼氏とデート?」
これらは一つひとつを取り上げれば、「ただの世間話」と言い逃れされてしまうかもしれません。
しかし、これらが毎日、「〇〇ちゃん」という呼びかけと共に繰り返されていたのです。
彼女が感じていた「怖さ」の正体。
それは、「自分は男性社員から性的な対象として見定められているのではないか」「このままでは、もっとエスカレートするのではないか」という予感でした。
たとえ男性社員本人に他意はなくとも、その「〇〇ちゃん」という呼び方は、
自分を「対等な同僚」ではなく、「何を言っても許される格下の存在」と位置づけるためのツールであるかのように感じられたのです。
彼女にとってその呼び名は、自分のパーソナルスペース(心の安全地帯)に土足で踏み込まれる合図のようなものだったのです。
「あの人の足音が聞こえて、『〇〇ちゃん』って声がすると、身体が強ばって冷や汗が出るんです。」
これは、もはや「気にしすぎ」で済まされるレベルを超え、心身に影響が出るほどのストレス反応でした。
現代のハラスメント対応において重要視されるのは、行為者の悪気があったかどうかの「意図」よりも、受け手の「感じ方」と「影響」です。
- 不快な呼称(ちゃん付け)
- 身体的接近(不必要なパーソナルスペースへの侵入)
- 容姿や私生活への言及(セクシャルハラスメントの要素)
現状はこれらが複合的に重なり、彼女の就業環境を著しく害している状態と言えるでしょう。
「あなたが感じている不快感は、決して大げさなものではありません。
今の状況は、なんとかしなければならない状況です。」
その言葉を聞いた瞬間、電話口の向こうで彼女が息を飲む気配がしました。
「会社に言っても……大丈夫なんでしょうか。」
自尊心を削られてしまうと、「自分が我慢すれば丸く収まる」と考えがちです。
しかし、問題の本質を整理し、客観的な視点を入れることで、解決への道筋は見えてきます。
彼女は、カウンセラーとの対話を通じて、「自分の心を守るために動いてもいいんだ」という確信を持ち始めました。
後編では、社外相談窓口から企業側へどのように報告を行い、職場環境がどう改善されたのか。
その具体的なプロセスと結末をお届けします。
エィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口では、
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職場の小さな違和感も見逃さず、客観的視点で整理・報告。
企業のリスク管理と従業員保護を両立する体制構築を支援します。
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