【後編】「強制的な昇進」はパワハラになる?――企業が選んだ、法よりも大切な解決策

■前回のあらすじ

昇進辞退を悩んでいた相談者は、カウンセラーを通じて

「現在の業務過多」「介護の問題」「キャリア志向の不一致」という真の理由を言語化しました。

「ただの拒否ではなく、事情を説明しよう」と決意した彼。

それと並行して、エィチ・シーサービスのコンサルタントは、会社の人事担当者へ状況の報告と専門的な助言を行いました。

 



 

相談者の同意を得て、コンサルタントは企業の窓口担当者へ連絡を入れました。

「昇進の打診に対し、本人が強い不安を抱えています」

日本の労働法において、企業には広範な「人事権」が認められています。

正当な理由なく業務命令を拒否すれば、懲戒の対象となり得るのも事実です。

つまり、「嫌だからやらない」という主張が常に通るわけではありません。

しかしコンサルタントは、別のリスクにも目を向ける必要があると指摘しました。

本人が合理的な理由(今回は介護や適性不安)を訴えているにもかかわらず

「つべこべ言わずにやれ」「断るなら評価を下げる」と高圧的に迫れば、

それはパワーハラスメントと判断される可能性が高まります。

無理に押し切った結果、メンタル不調や離職につながれば、企業にとっても大きな損失です。

コンサルタントは、「人事権の行使」ではなく対話による合意形成を優先すべき局面であると助言しました。

 


 

報告を受けた企業側の反応は柔軟なものでした。

早速、本人との面談が実施され、率直な意向確認が行われました。

その結果、今回のケースでは無理な昇進は見送られました。

代わりに、本人の専門性を活かせる「プロジェクトリーダー(管理職ではない上位職)」という役割が新たに設定されました。

本人は過度な責任から解放され、会社としても貴重な戦力を失うことなく、

適材適所で能力を発揮してもらえる形となりました。

双方にとって、現実的で納得感のある着地だったと言えるでしょう。

 


 

今回の事例は、「昇進するか・しないか」という選択を迫る以前に、

企業側の準備が不足していたという構造的な課題も浮き彫りにしました。

管理職候補者に対し、

・どんな責任があるのか

・どの程度の負荷がかかるのか

・どんな支援体制があるのか

そうした情報が十分に共有されないまま「次はあなたです」と打診されれば、不安や拒否感が生まれるのは自然な反応です。

 


 

近年では、こうした問題意識から、昇進を段階的に検討できる仕組みを任命前に導入する企業も増えています。

 

① 管理職候補者向けに、マネジメントの基礎や責任範囲を学ぶ研修を実施

② 一定期間、管理職の補佐や代理として業務を体験

③ その経験を踏まえ、「自分に合うか」を本人が判断できる機会を設ける

④ 管理職就任後も、定期的なフォロー研修や面談を通じて継続的にバックアップする

 

こうした段階的なプロセスがあれば、昇進は「一度きりの決断」ではなく、試しながら考えられる選択肢へと変わります。

「昇進辞退」は、一見するとネガティブな出来事に見えます。

しかし、それを「本人のワガママ」と切り捨てるのか、「組織の課題」として向き合うのかで、結果は大きく変わります。

昇進だけが正解ではない時代。

昇進を断らせない組織ではなく、昇進を安心して考えられる組織であること。

一人ひとりの事情に目を向け、対話を通じて納得できる着地点を探ることこそが、

従業員エンゲージメントを高め、組織を強くしていきます。

社外相談窓口は、そうした対話のきっかけをつくるための場所でもあるのです。

 


 

エィチ・シーサービスでは

「昇進拒否」への対応を誤ると、パワーハラスメントや離職といった深刻な問題に発展しかねません。

エィチ・シーサービスの社外相談窓口は、知識と配慮の両面から、企業と従業員の双方が納得できる解決策を支援します。

貴社のリスクマネジメント強化に、ぜひご活用ください。

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