【中編】「怒ってはいけない」管理職が抱え込んだ本音――相談でほどけた葛藤

■前回のあらすじ

化粧品メーカーの女性管理職Aさんは、部下である女性社員Bさんからの「ため息」や「会話拒絶」といった態度に激しい怒りを感じながらも、

「感情的な上司」と見られるのを恐れて、その怒りを押し殺していました。

Aさんは、エィチ・シーサービスの社外相談窓口にSOSをだし、

第三者である私たち社外相談窓口に初めて苦しい胸の内を明かしました。

 



 

電話口でAさんが繰り返したのは、「腹が立つ」「我慢が限界」という強い言葉でした。

あの人の態度を見ると、本当に会社を辞めたくなります。

 でも、それ以上に『この幼稚な態度を許している自分が情けない』という怒りが湧いてきて…。」

カウンセラーは、その怒りを否定せず、まずはすべて吐き出してもらいました。

Aさん、その怒りは、仕事をするうえで当然払われるべき“当たり前の配慮”が欠けているからこそ湧き上がるもので健全な反応ですよ。」

この言葉に、Aさんは深く息を吐きました。

Aさんを苦しめていたのは、部下Bさんの態度そのものもさることながら、「怒ってはいけない」という自己規制だったのです。

 


 

感情の整理が進んだタイミングで、カウンセラーは一つの提案をしました。

それは、相談窓口が介入する前に、Aさん自身が動くという選択肢でした。

Aさん、もし可能なら、今の状況をご自身で上長の方に相談してみてはいかがでしょうか?」

Aさんは戸惑いました。

「でも、『管理不十分』だと思われるのでは…」

カウンセラーは優しく、しかし力強く背中を押しました。

「感情的に『部下が嫌いだ』と伝えるのではありません。

『部下の態度により業務の進行や職場の空気に具体的な支障が出ている』という“事実”として報告するのです。

これは管理職としての正当な業務報告であり、弱音ではありません」

そして、こう続けました。

「まずは、事実とご自身の今の辛さを伝えてみてください。

管理職だって人として働いている以上、理不尽に感じたり、不満が湧いたりするのは自然なことです。

でも、もし相談しても何も変わらなかったり、これ以上無理だと感じたりしたら、すぐにまたここに電話してください。

その時は、会社への働きかけも含めて、次の手を一緒に考えましょう。

ここがセーフティネットですから、安心して一歩踏み出してみてください」

「……そうですね。私だけで抱える問題じゃないと分かりました。

 相談できる場所があると思えば、冷静に話せそうです」

Aさんの声には、最初にはなかった力が戻っていました。

「やってみます。また何かあったら頼らせてください」

そう言って、彼女は電話を置きました。

 


 

管理職の抱える怒りは、「指導」と「ハラスメント」の境界線上で複雑化し、自己嫌悪へと繋がりがちです。

しかし、外部の専門家が間に入り、その怒りを「環境改善のためのエネルギー」として再定義することで、感情的な対立を避け、建設的な解決へと向かう道筋が見えてきます。

次回は、Aさんの行動と並行して社外相談窓口が行った「会社へのリスク共有」、そして訪れた結末についてお伝えします。


 

エィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口では、

  •  「社内の人には相談しにくい」――そんな従業員の悩みを、利害関係のない第三者の立場で受け止める『社外相談窓口』を提供しています。

    単なる愚痴聞きで終わらせず、ご相談者の意向を尊重しつつ、

    組織の課題解決に向けた「会社への建設的なフィードバック」まで伴走し、健全な職場環境づくりをサポートします。

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