-
■ 前回のあらすじ
前編では、小売業を営む企業の営業部長Dさんの相談に対し、カスハラと正当なクレームの違いは「要求の手段と程度」にあることをお伝えしました。
現場が最も苦しむのは、白黒はっきりしたケースではなく、上司によって判断が分かれる一貫性のなさ。
「どこまで耐えるか」を個人の裁量に委ねる状態が続けば、確実に現場は疲弊し、離職へと繋がります。
-
-
-
■「お客様より、会社の対応がつらい」
「実は最近、“お客様より会社の対応の方がつらい”という声も出始めているんです」
Dさんは、少し声を落としてそう話しました。
「クレーム対応そのものが苦しいというより、“上司が守ってくれない”という感覚が強いみたいで……」
コンサルタントは静かに頷きました。
「それは、実際によく起きる状態です。顧客対応以上に、“会社が自分を守ってくれない”という不信感が、人を追い詰めてしまうことがあります」
■実際に起きた「現場任せ」のケース
実際、ある店舗では、特定の顧客からの対応が長期間続いていました。最初は、商品への正当な指摘でした。
そのため現場でも、「対応するしかない」という空気が自然とできあがっていたといいます。
しかし、次第に状況はエスカレートしていきました。
・毎回1時間以上続く電話
-
・担当者変更の繰り返し要求
-
・謝罪の録音要求
-
・深夜帯の執拗な連絡
それでも社内では、「昔からいるお客様だから」「刺激しない方がいい」「穏便に済ませよう」という判断が続いていました。
Dさんも当時を振り返ります。
「正直、“対応し続けるしかない”と思っていました。でも、今考えると、“誰がどこまで対応するのか”が完全に曖昧だったんです」
結果として、現場担当者が一人で抱え込み続ける状態になっていました。
限界を迎えたスタッフから、最終的にエィチ・シーサービス株式会社の社外相談窓口へSOSが入ったのです。
コンサルタントは、その企業へこうお伝えしました。
「今必要なのは、“現場の頑張り”ではありません。組織として、“どこからをカスハラと判断するのか”を明確にすることです」
さらに、
・対応ルールの明文化
-
・エスカレーション基準
-
・対応記録の統一
-
・管理職介入のタイミング
など、組織としての制度化の必要性をご説明しました。
加えて、カスタマーハラスメント防止措置が法制化される中で、必要な対応を怠ることは、
企業としての安全配慮や労務管理の観点からもリスクになり得ることを共有しました。
-
するとDさんも、ようやく現場の状態を客観視できたようでした。
「現場が弱いんじゃなかったんですね。“経験のある人が何とかする”前提で、会社が仕組みを作れていなかったんだと思います」
-
■大手企業でも進む「組織として従業員を守る対応」
その後、その企業では対応ルールの整備と管理職研修がスタート。
“個人対応”から“組織対応”への切り替えが始まりました。
コンサルタントは、Dさんへこう続けました。
「実は今、“従業員を守る姿勢”を明確に打ち出す企業はかなり増えています」
例えば、大手企業では、
・カスハラ行為の具体例を明文化する
-
・悪質ケースでは警察
-
・弁護士と連携する
-
・出入り禁止や取引停止基準を整備する
-
・管理職・現場向け研修を実施する
- といった動きが加速しています。
-
■「従業員を守る」姿勢が、これからの企業価値を決める
「今は、“顧客満足だけを優先する企業”より、“従業員を守れる企業”の方が選ばれる時代になりつつあります」
その言葉に、Dさんはゆっくり頷きました。
「“お客様第一”だけでは、もう現場が持たない時代なんですね……」
現場任せが続くと、苦しくなるのは顧客対応そのものより、「会社が守ってくれない」という不信感です。
-
一方、組織として基準と対応フローを整えた企業では、現場が一人で抱え込まずに済む環境が生まれます。
後編では、現場が迷わないために必要な「制度化」と「実務研修」、
そして社外相談窓口の新しい役割について、さらに具体的に解説していきます。 -
-
エィチ・シーサービスでは
-
社外相談窓口に寄せられるリアルな声をもとに、どの部署や場面で負荷が高いかを分析し、組織課題として可視化するご支援を行っています。
「現場の経験則」に頼るマネジメントから脱却し、企業として従業員を守る体制づくりを目指す企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
ご相談・お問合せはこちらから。
【中編】これはクレームか、カスハラか──「現場任せ」が限界を迎えたとき、企業はどう動いたか