-
■ 前回のあらすじ
-
第2回では、ホテル業などの接客業において、企業が身だしなみや服装のルールを定めることには法的・実務的な合理性があることを解説しました。
しかし一方で、企業が無制限に従業員の外見をコントロールできるわけではありません。
今回は、個人の尊厳を傷つけないための配慮とルール運用のバランスについて考えます。
- 【前回記事】第2回:服装ルールと職場秩序──【法律の基本編】企業はどこまで従業員の服装を制限できるのか?
-
-
■ ジェンダーや宗教・身体的事情への配慮
-
現代の服装ルールをアップデートする上で、まず見直すべきは「ジェンダー格差」や「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」です。
E部長は、
「昔からの名残で『男性はネクタイ必須、女性はスカート必須』という規定になっているのですが、これも見直すべきでしょうか?」
と質問しました。
「はい。性別による不合理な区別は、現代では問題視されるリスクが非常に高くなっています。
例えば、『男性ならネクタイを締めるのが当然』『女性はスカートが望ましい』といった考え方は、
本人に悪意がなくてもアンコンシャスバイアスとして受け取られる可能性があります。
企業としては、従来の慣習だからという理由だけでルールを維持するのではなく、
そのルールに合理的な必要性があるのかを改めて検証することが重要です」
現在は、本人が希望する制服を選択できたり、性別に関係なく複数の制服パターンを用意したりするなど、「選択の自由」を持たせる企業も増えています。
さらに、宗教的・文化的背景(ヒジャブの着用など)や、身体的事情(アレルギーや障害により特定の素材や形状の制服着用が困難な場合)への配慮も欠かせません。
個別の事情を十分に確認しないまま一律で指導や処分を行うと、差別的取扱いと受け取られ、大きなトラブルへ発展する可能性があります。
一方でコンサルタントは、E部長に対して次のような点も強調しました。
「多様性への配慮は重要ですが、それによって企業が求める安全管理や衛生管理、品質管理まで否定されるわけではありません。
近年は『個人の自由』や『自分らしさ』が重視される時代ですが、その権利と、企業が事業運営上必要なルールを定める権限は別の問題です。
なぜそのルールが必要なのかという合理的な理由を企業が説明できること、そして従業員がその目的を理解できることが、健全な職場運営につながります」
E部長は、「自由を認めることと、職場秩序を維持することは対立するものではなく、両立させることが大切なのですね」と納得した様子で頷きました。
-
■次回予告
多様性や個人の尊厳に配慮した上で、それでもなお、個人の自由を主張して着崩しを続ける従業員がいた場合、会社は「懲戒処分」を下せるのでしょうか?
次回(第4回)は、処分を科す前に知っておくべき「法律の壁」を解説します。
-
-
エィチ・シーサービスでは
-
エィチ・シーサービス株式会社では、管理職向け研修やハラスメント対策研修を通じて、「なぜそのルールが必要なのか」を現場へ正しく浸透させる支援も行っています。
ルールを作るだけでなく、多様性に配慮しつつ現場に理解され、運用される仕組みづくりまでサポートいたします。
ご相談・お問合せはこちらから。
-
第1回:服装ルールと職場秩序──【事例編】ビジネスホテルで起きた「制服の乱れ」トラブル 第2回:服装ルールと職場秩序──【法律の基本編】企業はどこまで従業員の服装を制限できるのか? 第3回:服装ルールと職場秩序──【多様性・ジェンダー編】「個人の尊厳」と「ルール遵守」のバランス 第4回:服装ルールと職場秩序──【法的リスク編】制服の乱れを理由にいきなり「懲戒処分」はできるか? 第5回:服装ルールと職場秩序──【実務対策編】リスクを回避し秩序を取り戻す「4つのステップ」 第6回:服装ルールと職場秩序──【組織づくり編】「守らされる規則」から「納得して守るルール」へ
-
-
【前回連載はこちら】 【前編】これはクレームか、カスハラか──"グレーゾーン"で現場が疲弊する前に
-
【こちらもオススメ】