第4回:服装ルールと職場秩序──【法的リスク編】制服の乱れを理由にいきなり「懲戒処分」はできるか?

  • ■ 前回のあらすじ

  •  第3回では、職場での服装ルールにおけるジェンダー格差の解消やアンコンシャスバイアスへの気づき、宗教・身体的事情への配慮の重要性を解説しました。

    多様性を尊重しつつも、企業秩序を守るバランスが求められます。

    今回は、再三の注意を無視して制服の乱れを続ける従業員に対し、実際に「懲戒処分」を検討する際に関係する法律について掘り下げます。

  • 【前回記事】第3回:服装ルールと職場秩序──【多様性・ジェンダー編】「個人の尊厳」と「ルール遵守」のバランス

  • ■ 服装ルールに関係する法令と「懲戒処分」の条件 

  • 「服装や身だしなみそのものを直接規制する法律はありません。

    しかし、服装ルールの運用や懲戒処分の有効性を判断する基準となる法律や社内規程は複数存在します」コンサルタントは解説を続けます。

    主に関係するのは、

  • ・労働基準法第89条(就業規則の作成)

  • ・労働契約法第15条(懲戒権の濫用)

  • ・男女雇用機会均等法

  • ・障害者差別解消法 などです。

    また実務上は、就業規則だけでなく、服務規程(服務規律)に服装や身だしなみの基準を具体的に定めている企業も少なくありません。

    服務規程には、企業秩序の維持や接客品質の確保、衛生管理などを目的として、制服の着用方法や身だしなみ基準が定められているケースが多くあります。

    ただし、就業規則や服務規程に「制服を正しく着用しない場合は処分する」と記載されているからといって、直ちに懲戒処分が法律上認められるわけではありません。

    ここで非常に重要になるのが、労働契約法第15条の考え方です。

    法律では、「懲戒処分が就業規則等に定められており、その処分内容が客観的に合理的であり、かつ社会通念上相当でなければならない」と定められています。

    E部長が、「つまり、制服の乱れだけを理由に、ある日突然重い懲戒処分を行うのは難しい、ということですね」とこぼすと、コンサルタントは強く頷きました。

    「その通りです。どんなに看過できないルール違反であっても、事前にルールが明確化されていること、そして段階的な指導プロセスを経ていることが重要です。

    そうした客観的な手続きを踏まず、感情的に行われた懲戒処分は、後に『権利の濫用』として無効と判断される可能性が非常に高くなります。

    戒告・減給などの比較的軽い処分であっても、その根拠と手続きは慎重に整備しなければなりません」

  • 次回予告

    どんなに問題のある行動であっても、いきなりの処分には高い法律の壁があります。

    では、企業が無効な懲戒処分リスクを避け、健全に職場秩序を取り戻すにはどうすればよいのでしょうか?

    次回(第5回)は、企業が取るべき具体的な実務プロセス「4つのステップ」を提案します。


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